今日は企業経営理論R2第33問について解説します。
消費者と社会的アイデンティティに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 感覚や好みに基づいて選択される場合と異なり、専門的知識が必要な製品やサービスに関しては、消費者は属性や価値観が自分と類似している他者の意見やアドバイスを重視する。
イ 自己アイデンティティを示すため、消費者は拒否集団をイメージさせるブランドの選択を避ける傾向がある。この傾向は、他者から見られている状況において行う選択よりも、見られていない状況において行う選択で顕著に強くなる。
ウ 自己概念において社会的アイデンティティが顕著になっている場合、自分が所属している内集団で共有される典型的な特徴を支持するようになる一方、自分が所属していない外集団すべてに対して無関心になる。
エ 自分に影響を与えようとする意図をもった他者が存在する場合、消費者の行動はその他者から強く影響を受ける一方で、単にその場にいるだけの他者からは、影響を受けることはない。
オ 自分に対する他者からの否定的な評価を避け、肯定的な評価を形成していこうとする欲求は自己高揚と呼ばれる。自己高揚のレベルが高い消費者は、自分の所属集団よりも、願望集団で使用されているブランドとの結びつきを強める傾向がある。
解説
今回は消費者と社会的アイデンティティについての問題です。
それでは早速各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、「属性や価値観が自分と類似している他者の意見やアドバイスを重視する」製品やサービスは専門的知識が必要なものというよりは感覚や好みに基づいて選択される場合が多いと考えられます。
具体例で考えてみましょう、感覚や好みに基づいて選択される製品というとファッションや雑貨などが挙げられ、専門的知識が必要な製品というと家電や医薬品などが挙げられるかと思います。それらを比較すると属性や価値観が自分と類似している他者の意見やアドバイスを重視するのは後者ではなく、前者だと考えられます。後者の場合は属性や価値観が自分と類似している人よりは、専門知識を持っている人の意見やアドバイスを重視すると考えられます。
よって、この選択肢は×と判断できます。
このように、表現が抽象的な場合、それに当てはまる具体例を考えてみると、○×を判断する良い材料になる場合があります。
選択肢イは、前半の「自己アイデンティティを示すため、消費者は拒否集団をイメージさせるブランドの選択を避ける傾向がある。」は確かにその通りです。
しかし、この傾向は、見られていない状況において行う選択よりも他者から見られている状況において行う選択の方で強くなります。
こちらも具体例で考えてみると、例えば、添加物や人工物といったものを嫌っている、オーガニックとか自然派とかを好む集団に所属しているAさんが食料品を買う場合を考えてみましょう。インスタにアップするときなど他者から見られていることを意識するときは、Aさんはーガニックな食品を選ぶことが多いかもしれませんが、一人で買い物するときなど他者から見られていないときはジャンクフードなどを買うこともあるかもしれません。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢ウは、「自分が所属していない外集団すべてに対して無関心になる」とありますが、必ずしもすべて無関心になるわけではなく、場合によっては批判的になったり攻撃的になったりすることもあります。よってこの選択肢は×と判断できます。
選択肢エも、具体例で考えてみると良いでしょう。
自分に影響を与えようとする意図をもった他者が存在する場合、消費者の行動はその他者から強く影響を受ける一方で、単にその場にいるだけの他者からは、影響を受けることはない。
例えば、自分に影響を与えようとする意図をもった他者が存在する場合でも、その他者の考え方が自分と合わなければ影響をあまり受けないかもしれませんし、単にその場にいるだけでも、例えば周りの人がみんなドーナツをとても美味しそうに食べながら歩いていたら、自分もみんなが食べているドーナツを食べたくなってしまうなど影響を受ける場合があります。
よってこの選択肢は×と判断できます。
選択肢オは、その通りで、自己高揚のレベルが高い消費者は、「こうありたい」と思うあこがれの集団である、願望集団で使用されているブランドとの結びつきを強める傾向があります。
以上から、正解は選択肢オとなります。